COLUMN

コラム| 時間を重ねたものを、これからの暮らしへ。

ーー時間を重ねたものを、これからの暮らしへ。
ーー古家具・古道具の店「二季」に訪ね、もののよさを活かすということ

ものを選ぶとき、私たちは何を見ているのでしょう。

色やかたち、使いやすさ。
手に取ったときの心地よさ。

もちろん、それらは大切なことです。
けれど、ものの背景にある素材や技術、つくり手の考えを知ることで、目の前にあるものの見え方が変わることがあります。

今回は、北海道・東川町の古道具・古家具店「二季」を訪ねました。

明治、大正、昭和初期につくられた家具を中心に扱う二季。長い時間を経てきたものの魅力を見つけ、手を加えながら、今の暮らしへとつないでいます。

そこには、Salviaがものづくりで大切にしていることにも通じる、ものとの向き合い方がありました。

ーーそのものが持つ、よさを見つける。

二季では、古い家具の塗装を削り、木目を引き出すことがあります。

ただ塗装をはがすのではなく、家具全体のバランスや、角のわずかな丸み、繊細な装飾を損なわないように、ていねいに削っていきます。

家具が本来持っている美しさを、もう一度見つけるような仕事です。

一方で、塗装された状態そのものに味わいがあるものや、素材の特性から塗装を残したほうがよいものもあります。必要に応じて塗装を施すこともありますが、決まった方法に当てはめるのではなく、そのもののよさを活かすことを大切にしています。

ものを美しくするために、必ずしも新しく整えればよいわけではない。

何を残し、何を引き出し、どこに手を加えるのか。

その見極めにこそ、つくり手の感性や経験が表れるのだと思います。

ーー見えないところに宿る、技術と工夫。

二季で扱う家具には、背板にも一枚板が使われていたり、上質な木材が贅沢に用いられていたりと、今ではなかなか出会えないつくりのものがあります。

まだ機械化が完全ではなかった時代。家具の用途に合わせた工夫や、職人の技術と知識が、細部にまで息づいています。

西洋の影響を受けた意匠や、ガラスに残る独特の波うち。均質につくられた現代の製品とは異なる、ひとつひとつの個性やゆらぎも魅力です。

表面を見ただけではわからないことが、知るほどに見えてくる。

ものの価値は、見た目や機能だけで決まるものではありません。素材をどう選び、どんな技術でかたちにし、どこに工夫を重ねたのか。そうした背景もまた、ものの魅力をつくっているのです。

ーーすぐに答えを出さず、ものの可能性を残す。

二季では、何に使うのかわからないものや、気に入ったけれど、どう使えばよいのかわからないものも、手元に残しておくことがあるそうです。

すると、ある日、別のものと組み合わせることで、まるであつらえたかのように使い道が見つかることも。

最初から用途を決めつけず、そのものが持つ可能性を残しておく。

効率よく、すぐに答えを出すことが求められる今だからこそ、時間をかけて向き合うことで見えてくる価値があるのかもしれません。

それは、ものをつくるときにも通じることです。

素材の特性を知り、その持ち味を活かす。使う人の暮らしを想像しながら、必要な機能やかたちを考える。そして、つくったものが日々の暮らしの中でどう使われていくのかを思い描く。

ものをつくることは、完成した瞬間だけで終わるものではありません。

使う人のもとへ届き、暮らしの一部となり、時間を重ねていく。その先まで考えることも、ものづくりの大切な一部なのだと思います。

ーー暮らしの中で、ものと出会い直す。

二季が古家具に関心を持つようになったきっかけは、コロナ禍のある出来事でした。

閉塞感のある日々のなか、暮らしの器にこだわってみようと思い、気に入った器を買い求めたそうです。

ところが、家で使ってみると、お店で感じたほどの魅力がありません。

その理由を考えたとき、器が古道具と一緒に並べられていたことに気づきました。器そのものだけでなく、周りにあるものや、その場の空気も含めて心を惹かれていたのかもしれません。

そこから、ものを引き立てる古道具や家具に興味を持ち始めました。

やがて、家具の背景やつくりを知るほどに、見た目にはわからない物語や技術に惹かれるようになったといいます。

ものは、それひとつで完結するのではなく、置かれる場所や、一緒に使うもの、暮らしの風景によっても、その魅力が変わります。

ものと暮らすことは、手に入れたときの喜びだけでなく、日々の生活のなかで、そのよさを少しずつ知っていくことなのかもしれません。

ーーこれからの時間を、一緒に重ねる。

長い時間を経て、さまざまな人の手を渡り、二季へとたどり着いた古家具。

その素材やつくりが持つ魅力を活かしながら、今の暮らしになじむかたちへとつないでいく。

そこには、古いものをただ懐かしむのではなく、これからも使い続けられるものとして捉える視点があります。

Salviaもまた、「人」と「暮らし」を出発点に、素材や技術を活かしながら、日々の心地よさにつながるものを考えてきました。

手に取ったときの感触や、身につけたときの心地よさ。何気ない毎日の中で、使うたびに感じるよさ。デザインの魅力だけでなく、その背景にある技術や工夫も含めて、長く付き合っていけるものを届けたいと考えています。

ものの価値は、つくり手の手を離れたあとも、使う人の暮らしのなかで育っていくもの。

気に入ったものを大切に使い、必要に応じて手をかけ、直しながら、次の時間へとつないでいく。

新しいものを選ぶときにも、今あるものを使い続けるときにも、その背景に目を向けてみる。

そんな小さな積み重ねが、日々の暮らしをより豊かにしてくれるのではないでしょうか。

二季の古家具との出会いから、ものを選ぶこと、つくること、そして長く使うことについて、あらためて考えました。

店主:箭内恒奎さん

北海道当麻町「二季」